ミントグリーン~糖度0の初恋~




私たちの正面には真っなウェディングドレスの花嫁さんと濃紺のスーツを身に纏った花婿さん。


それと幸せいっぱいな2人に拍手や声援を送る盛装の人たち。



「二次会ですか?」



新婚さんから目を離さないまま踊子さんが訊ねる。



「うん。そう。
2人ともサービス業だから平日に式を挙げたんだ。

ちなみに花嫁さんはここの下のスポーツ店の娘さんね。

お母さんからうちを会場にしたいって頼まれちゃって。

だから、2人が話してたことに胸を張って抗議は出来ないんだけど」



シンタくんはペロッと舌を出して、料理とお酒を出し終わったら照明係までやらされてる、と笑った。



「そうだったんだ……」



頷いて隣の踊子さんに目をやると、食い入るように花嫁さんを見つめたままだった。



「千波と違ってこの光景がすぐ近くに控えてる人だからね」



そんな踊子さんを見て、シンタくんがクスリと笑う。



「うん……」



『千波と違って』というところに抗議するべきか悩んだけど、目の前で繰り広げられている幸せいっぱいの光景を見たらどうでもいいように思えた。



私にとっては、初めて見るおめでたい席だった。
親戚でも、もちろん友人でも、私の周囲に結婚をした人がまだいなかったから。



こんなに華やかなんだ。
こんなに祝福してもらえるんだ。



私は、自分が一番結婚したいと思っている男性(ヒト)のすぐ横で圧倒されていた。



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