ミントグリーン~糖度0の初恋~
「今日はこちらにお泊まり?」
急にそんなことを訊ねられて戸惑う。
「え?……うん。
お兄ちゃんたちの部屋に泊めてもらう。
明日は大学休みだし…」
「それで、私が明日は遅番で休日出勤だから一緒に家出て帰るんだよね?」
踊子さんが私の後に言葉を続けてくれた。
「なるほどね…」
シンタくんは顎を擦りながら思案顔を見せていたが、すぐに視線を上げると
「急いで帰らなくてもいいならここに寄ってきな。
旨いランチを食わせてやるから」
「わぁー、千波ちゃんラッキー」
キョトンとしている私の肩を抱いて、何故か踊子さんが嬉しそうにしている。
私は突然のお誘いに驚いてしまって、すぐには反応出来ない。
「来る?来ない?」
私の頭に手を置いたシンタくんに顔を覗き込まれて
「…………来る」
赤くなりながらようやくそれだけを言った。
「ん。じゃ、明日昼頃にここにいらっしゃい。
ウメちゃんは埋め合わせまた今度ね。
明日は夕方までにこいつ帰しておくから」
シンタくんはそう言って、私の頭を少し乱暴に揺すってから
「それじゃあね」
と店に戻っていった。