ミントグリーン~糖度0の初恋~
「さて、ご飯にしようか?食欲はある?」
「あんまり……。でも、食べる」
きちんと食べて早く治さなければ。
「そうだね。少しでも食べないとね。
シンタさんがトマトリゾット作っていってくれたから温めるね」
踊子さんが立ち上がってキッチンへ向かう。
その背中に問いかけた。
「シンタくんは帰ったんだ?」
「うん。私と入れ違いですぐにね。
金曜だから遅くなっても店開けようかなって。
私も電話もらってからすごい焦っちゃってシンタさんの都合考えてなかったよ…。
悪いことしちゃった」
「いや……、一番悪いのは私だし。
ね、そもそも何でシンタくんが来てくれたの?
私、お兄ちゃんが来てくれるかと思ったんだけど」
「あー……、シンタさんには聞いてないんだ?」
布巾を手にした踊子さんが手際よくテーブルを拭きながら私に首を傾げてみせる。
「清海は今いないんだよね。
明後日まで塾の夏合宿で河口湖に行ってるの。
私も今日はどうしても仕事抜けられなかったからシンタさんに頼っちゃったんだ。
このマンションは女子大生専用だから私が管理人さんに電話して、今から兄が駆けつけるから入れてやってくれってお願いしてね。
あー、シンタさんには嘘もつかせちゃったなぁ」
小さくため息をついた踊子さんに、そうさせてしまったのは私なんだと自己嫌悪に陥った。
本当に私は甘えたり、迷惑かけたりばっかりだ。
俯いている私に気付いた踊子さんが少し慌てたように声をかける。