ミントグリーン~糖度0の初恋~
『もしもし?千波?』
電話に出た母の声はいつもとなにも変わらなかった。
「うん……」
私はといえば、自分から架けたくせに言葉が続かなくて電話なのに黙りこむ始末。
思えば、たった6日前に帰らない宣言したのだ。
やっぱり帰るとは言い出しづらいような…。
『何かあったの?』
結局、また母から問い掛けられた。
「別に何もないよ。
ーーーってか、久し振りに扁桃腺炎にはなったけど…」
ポロっと言ってしまった。
いつもそうだ。
何かあっても親には言いたくない。
強がったり、心配かけたくないと自分の中に納めようとしても。
母の『何かあった?』にポロポロと白状してしまう。
『ええ?!
大丈夫なの? 今からすぐ行くからっ…』
「いやいや。もう治ったし。
さっきまで踊子さんがいてくれて看病してくれたから」
取り乱した母に驚いて慌てて宥める。
今すぐ行くからって……。
そこまでお手軽な距離じゃないし、ここは。
でも、その一言に目頭が一気に熱くなった。
あんなに親不孝な態度をとったのに、母は私を心配してくれる。
どれだけ大切にされているのかこんなことがないと分からなかった自分が情けない。
『 もう!踊子さんに心配かけて!
本当にもう大丈夫なの?
喉痛くない?
ご飯は食べれてるの?』
尚も優しい声で質問攻めにされて、私はついに泣き出してしまった。