ミントグリーン~糖度0の初恋~
「……グスッ……大丈夫。
グスッ……あ、明後日から…そっちに帰る。
今月いっぱいそっちで過ごす…」
そんな私を母はクスクスと笑った。
『なに泣いてるの?
ったく、病気した途端に弱気になったのかしら?
しっかりしなさい。
じゃあ、明日あんたのお布団干しておかなきゃね?
バスの時間が分かったら電話でもメールでもしなさい。駅まで迎えに行くから』
「うん……。ありがと。
それと……この間はごめんなさい」
『頑固なあんたがそんなに素直になると気味が悪いわ。
とにかく気を付けて帰ってらっしゃい。
何か食べたいものとかあるの?』
「コロッケ」
炒めたコンビーフと玉ねぎがたっぷり入った母特製のコロッケは、私の大好物だ。
『はいはい。じゃ、たくさん作って待ってるからね。
まだ扁桃腺治ったばかりなんだから無理しないのよ?』
「うん。分かった。じゃ、明後日ね?」
最後まで優しさ満載の母との電話を終えた。
シンタくんも、踊子さんも、そして母も。
私にはたくさんの優しさをくれる人がいるんだ。
「もう少し寝ておこうかな…?」
元気に帰省できるように体調を整えよう。
私は温かい気持ちを抱いたままベッドに潜り込んだ。