ミントグリーン~糖度0の初恋~




「……グスッ……大丈夫。

グスッ……あ、明後日から…そっちに帰る。

今月いっぱいそっちで過ごす…」


そんな私を母はクスクスと笑った。


『なに泣いてるの?

ったく、病気した途端に弱気になったのかしら?
しっかりしなさい。

じゃあ、明日あんたのお布団干しておかなきゃね?

バスの時間が分かったら電話でもメールでもしなさい。駅まで迎えに行くから』


「うん……。ありがと。

それと……この間はごめんなさい」


『頑固なあんたがそんなに素直になると気味が悪いわ。
とにかく気を付けて帰ってらっしゃい。

何か食べたいものとかあるの?』


「コロッケ」


炒めたコンビーフと玉ねぎがたっぷり入った母特製のコロッケは、私の大好物だ。


『はいはい。じゃ、たくさん作って待ってるからね。
まだ扁桃腺治ったばかりなんだから無理しないのよ?』


「うん。分かった。じゃ、明後日ね?」



最後まで優しさ満載の母との電話を終えた。




シンタくんも、踊子さんも、そして母も。


私にはたくさんの優しさをくれる人がいるんだ。



「もう少し寝ておこうかな…?」


元気に帰省できるように体調を整えよう。


私は温かい気持ちを抱いたままベッドに潜り込んだ。








< 242 / 507 >

この作品をシェア

pagetop