ミントグリーン~糖度0の初恋~
ーーー時間がほしいんだ。
何をしていても、シンタくんの声が頭から離れない。
大学が再開する前日、私はシンタくんに会いに行った。
シンタくんは、約束通り帰省を終えた私にナポリタンを作ってくれて、夏休みの報告をマメに相槌を打ちながら聞いてくれた。
「いっぱい楽しめたみたいで良かったじゃん」
「うん。ちゃんと帰って良かった。
ね、シンタくんはあの本全部読んだの?」
「あー、あれね。一応読みましたよ?
あ、返すのは今度でいい?」
「うん。あれ、ラスト泣けたでしょ?」
「……」
「……私もシンタくんに宿題出せばよかった。読書感想文」
ベシッ。…………無言で頭を叩かれた。
私たちはいつも通り何も変わらなかった。
そして、一通り話が終わって沈黙が訪れた時。
シンタくんが先に口火を切った。
「千波、誕生日の時のことなんだけど」
「うん……」
とたんに騒ぎだす心臓がうるさい。
「俺、千波のこともっとちゃんと考えようと思ってる」
「え?それって…」
一瞬期待した。
それって、もしかして…と。
でも、私の初恋はとことん甘くない。
シンタくんが続けた言葉は
「だから、時間がほしいんだ」
…………だった。