ミントグリーン~糖度0の初恋~
9・優柔不断でごめんなさい。
「いい店ですね」
そのお客さんは、ビアグラスを差し出した俺に人懐こい笑顔を見せて言った。
歳は俺と同じくらいだろうか?
サンドベージュのパンツにシンプルな白いシャツ。
その上に羽織っているジャケットは襟の形が変わっていてとてもお洒落だ。
「ありがとうございます」
丁寧に答えながら抹茶色の小鉢にこの店自慢のバターピーナッツを盛ってサービスする。
来店した時から興味深そうに店内を見渡し、きちんと吟味した上で誉め言葉を発してくれたのでささやかなお礼のつもりだ。
「うまっ!何すか?これ?」
一口ビールを飲んでからピーナッツを口に放り込んだ彼は目を丸くしながらカウンターから身を乗り出して俺に詰め寄る。
「ただのバターピーナッツですよ」
穏やかに微笑む俺に、ぶんぶん首を振りながら
「嘘ですよ!
これがただのバターピーナッツなら、今まで俺がピーナッツだと思って食べてきたものの説明がつきません」
必死に言うもんだから、俺はカウンターに左手だけつきながら吹き出してしまった。