ミントグリーン~糖度0の初恋~
「このカルボナーラもです!」
更に話に熱が入ったらしい柿本さんは、空になった翡翠色の皿をビシッと指差して
「イタリアンの専門店でもない洒落たバーで出てくる代物とは思えませんよ?
今まで食べたカルボナーラの中でもベストスリーは間違いありません。
本当にどこに本物が潜んでいるか分かりませんね。
これからは視野を広げてリサーチしていかないとなー」
ふんふんと1人で何度も頷く柿本さん。
「そんなに誉めていただくと照れますね」
本当に大真面目に力説するもんだから、何だかあちこちがむず痒い。
「誉めていただいたお礼に何か作りましょうか?
一杯サービスします」
「じゃ、ジンライム」
サクッと躊躇も遠慮もなく口にするのがまた清々しくて、俺は楽しくなりながら彼の前の皿を下げてグラスの準備をした。
「これだけうまいもの出せたら、ランチタイムなんて大盛況でしょう?」
酒を作る俺を眺めながら柿本さんが問う。
「ハハハ。柿本さん本当に誉め上手ですね?
でも、ここは昼営業はしてないんですよ。あくまでもお酒を提供するバーですから。
料理は僕の趣味なんで、あくまでも脇役です」
答えながらモスグリーンのコースターの上に出来上がったグラスを置くと
「ウソだー」
大袈裟に仰け反りながら柿本さんは目をまん丸くした。