ミントグリーン~糖度0の初恋~




「もったいないなー。もったいなすぎます」


しばらく目を丸くしたまま固まっていた柿本さんがジンライムを一口飲んで首を振る。


俺は曖昧に微笑んだまま、自分も何か飲もうかと後ろの酒棚を振り返った。



「料理もですけど、この店を昼間開けないなんて本当にもったいないなー」


「はい?」


ウォッカの瓶に伸ばしかけていた手を止めて柿本さんを見やる。


柿本さんは俺を見つめてからもう一度店内を見回して



「この店って、立地的に昼時いい明かりが入ってくるでしょう?」


「まあ……日当たりはいいですね」


俺の答えに満足したように頷いた柿本さんはゆっくりとグラスを口に運んで
「この酒もうまいですね」
と微笑んでから話を続けた。


「この店が一番いい表情を見せるのは昼間です。

もちろん今のこの雰囲気も悪くないですけど、木に拘った内装や観葉植物たちは自然光の方が映えるんじゃないですかね?

テーブルにちょっと凝ったクロス掛けたりしたら今とは全然違う雰囲気でいい店になると思います。

昼と夜で全然違う顔の店が出来たら面白いのになぁ」


小さく首を振る柿本さんを俺は黙って見つめていた。



< 283 / 507 >

この作品をシェア

pagetop