ミントグリーン~糖度0の初恋~




「実はこの店もオーナーに教えてもらったんです」


柿本さんの言葉になるほどと頷く。


この店はメイン通りから1本入ったところにあるので、地元の人以外がフラリとやって来ることは少ない。


「今日の打ち合わせが終わった後にどこかで食べて帰りたいって言ったら教えてくれました。
カルボナーラだけならうちの店よりうまいからって」


「はあ……」


専門店のオーナーが何を言ってるんだか。
人が良すぎるっつうの。
半ば呆れている俺に向かって柿本さんが首を傾げながら


「でも、教えてもらったのとちょっとだけ違ってました」


「何がです?」


「オーナーはこう言ったんです。

一番自信があるパスタをくれって言えばカルボナーラが出てくるって。

でも、一番自信のパスタはカルボナーラじゃなかったですよね?」


「そう……ですね…」


確かに俺は一番の自信作はナポリタンだと答えていた。



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