ミントグリーン~糖度0の初恋~
「マスター、いつものご飯セットとサラトガクーラー。
ライムたっぷり効かせてね」
この日最後の客は一番の常連。
ってか、こいつは客として扱うべきか友として接していいのかいつも迷う。
「珍しいじゃん。ここで食ってくなんて。
しかもノンアルコール?」
今夜は他にお客さんもいないし、2人だけだから友として接することにする。
「たまにはお前の料理も食べてやらないと寂しいだろ?」
「お気遣いどーも」
思い切りライムを絞ったグラスを差し出してやると清海は一口飲んで「く~」と思い切り顔をしかめた。
「ウメちゃんはどうしたの?
ケンカでもしたとか?」
「そんなわけないでしょ。
明日会社の資格試験だから家で猛勉強してるだけ」
「あ、そ」
それで酔って帰るのも申し訳ないからノンアルコールってわけね。
でも確かにこいつの言う通り、そんな理由でもないと清海がここで飯を食わないなんて物足りないかもな。
ウメちゃんが現れるまで何年も清海の胃袋を支え続けてきたのは自分だという自負があるだけに、そんな気味の悪いことを考えながら俺はフライパンを手に取った。