ミントグリーン~糖度0の初恋~
10・素直じゃなくてごめんなさい。
香折さんが店を訪れたのは、清海が伝言を伝えてきてから12日後。
日曜日の閉店間際だった。
その日最後のお客が帰って、看板を仕舞おうかという時に静かにドアを開けて
「まだお酒飲ませてもらえますか?」
滑り込むように入ってきた香折さん。
「どうぞ」
カウンターを右手で指し示しながら微笑みかけると、香折さんは安心したように息をついてスツールまで歩み寄りそっと腰掛けた。
「久し振り」
その声は耳にとても心地よくて、俺の胸に懐かしさが広がる。
「お久し振りです」
頭を下げてから視線を上げると香折さんのそれとまっすぐ繋がって、俺たちはクスリと笑い合った。