ミントグリーン~糖度0の初恋~
「これってデートっていうのかなあ?」
小さく口を尖らせる千波が面白くて俺はこっそり吹き出してしまう。
「立派なデートでしょ?
2人でデパートショッピングしてるんだから。
何が不満なのさ?」
「不満はないけどさ…。
ずっと地下食品売場だけじゃん。
それでこんなに買い込んじゃったら、この後どこにも行けなくない?」
「行かないし。
ってか、そんな時間ないでしょ?
戻ってこれを料理しないといけないんだから」
「えーっ?
それじゃ、私、ただの荷物持ち…」
「だから言ったじゃない。
千波が必要なんだ、って。
戻ったら泡立て係もやってもらうから」
「……シンタくん、サイテー」
すっかり不貞腐れて、両手に紙袋を下げたまま立ち止まった千波に今度こそ俺は声をあげて笑ってしまった。
苛めるのはこのくらいにしておかないとお姫様のご機嫌を直すのに苦労しそうだ。
俺は笑いが治まらないまま、千波に歩み寄ってモスグリーンのベレー帽が乗っかった頭に手を置いてやる。
そして耳元で一言囁いてやると、
千波はパアッと顔を輝かせた。