ミントグリーン~糖度0の初恋~
4
5月。
連休最後の土曜日。
私は、兄の引っ越しの手伝いに駆り出されている。
「ウメちゃん、これはキッチンでいいの?」
私の目の前を重そうな段ボールを抱えて通りすぎていくシンタくん。
薄手の長袖シャツを肘の上まで捲っていて、箱を持っている腕の筋肉がはっきり見える。
昔テニスをやっていたからか、思った以上にがっしりとした二の腕にドキドキする。
「あ、はい!
それは食器なんでキッチンへお願いします」
パタパタと駆け回る踊子さんは髪を振り乱していてもキラキラしてて、今まで見てきた中でも一番綺麗だった。
3年前から止まってしまっていた兄の時計を動かしてくれた人。
初めて会ったのは半年前くらいだけど、それから会うたびにどんどん綺麗になっていく踊子さん。
シンタくんが教えてくれた。
『ウメちゃんも自分の時を止めちゃってたんだよ。
清海がそれを動かした。
あの二人は、お互いにリハビリしながら助け合って変わることが出来たんだ。
俺は奇跡のカップルだと思うよ、あの人たち』