ミントグリーン~糖度0の初恋~
シンタくんの言葉は本当にしっくりと兄たちに当てはまるもので、忙しそうに動き回る踊子さんを見守る兄の表情は、長年共に時を過ごしてきた私ですら見たことがないくらい優しいものだった。
あんな顔が出来たんだね…。
私には1度も見せたことないじゃん。
小さな嫉妬は絶対にナイショ。
ま、踊子さんをライバル視する気なんて全くないんだけど。
「そこ邪魔。ボサッとするなら隅でしろよ。
ーーーヨーコちゃん!これはここでいいの?!」
今日が初対面のやたらとクチの悪いこの人。
踊子さんの弟だそうで。
つまり、近いうちに私の親戚になるわけだ。
やたらと背が高くて威圧感はハンパないし、何だか兄に対する態度もどこか偉そうにも見えるし。
うまくやっていけるかちょっと不安。
だけど、兄はこんな人でも周囲の人には
『義理の弟がメチャクチャ可愛い』
と言ってるみたいで。
こんな大きな大人を『可愛い』と表現してしまう気持ちが全く分からない。
でも、兄がうまくやっていけるなら私はそれでいい。
どうせ私との接点なんてそんなにはないだろうから。
走太さん(さっき名前を教えてもらった)の問いかけは、キッチンに入ってしまった踊子さんに届かないようで、そのことに膨れっ面をしている走太さんがちょっと面白くなった私は
「踊子さんを呼んできますね」
キッチンに向かってパタパタと走っていった。