私の人生を決めてください
朝。

起きたくない。

家から出たくない。

家に居たくない。

わたしの周りには彼の形跡が残っている。

それが愛おしいのか、息苦しいのかもわからない。

重い体を起こして出勤の準備をする。

鏡に向かってメイクをはじめる。

今日はほとんど寝れていない。

別れを告げられたあの日から眠ることができない。

寝不足の血色の悪い自分の顔が鏡の中に見える。

接客業の為ノーメイクでなんて出られない。

「はぁ、女ってめんどくさいな」

ノーメイクが許されたとしてもこんな顔で「どうしたの?」なんて聞かれても困る。

かといって薄化粧では納得がいかない。

仕事用のシンプルなカラコンとアイラインはリキッドで猫っぽく。

くまの浮いた目の下にはコンシーラーを。

両頬には血色の良さそうなチークを塗った。
< 2 / 26 >

この作品をシェア

pagetop