私の人生を決めてください
店舗の2階にある休憩室の1番入口側のテーブルがいつも私が座る場所。

椅子に座ると化粧ポーチからパウダーを出して顔をおさえる。

午後3時すぎ、テレビからは情報番組が流れている。

小休憩はテレビを見ながらぼーっとしていることが多い。

「あれ?花菜ちゃん休憩だ」

話しかけてきたのは外回り担当の細木(さいき)さん。
名前の割にお腹周りは横に太い。

「花菜ちゃん彼氏と別れたんだって?知ってびっくりしたよ」

うちの会社の人間はデリカシーがなく噂好きだ。

入社時から長く付き合っている彼氏がいることは自己紹介時に1人2人に話しただけなのに翌日には全員が知っていた。

別れたことも明言はしていないが徐々に広がりここ最近店舗内で大々的に広まっている。

「もういいんですよ、その話は。傷えぐらないでください」

「じゃあ今度ご飯行こうよ」

細木さんはわたしが入社した時から可愛がってくれる。
ちなみにわたしより10歳ほど年上の2児のパパだ。

女性社員の多いうちの店舗内でみんながお父さん扱いしている。

「奢ってくれるんですか?」

「もちろん」

わたしをちやほやしてくれる人なんていないから細木さんは貴重な存在だ。

「おっと時間だ。じゃあ行ってきます」

「いってらっしゃい」

細木さんが休憩室から出たらドアの向こうから「いってらっしゃい」と聞こえてきた。
聖ちゃんの声だ。

「花菜ちゃんわたしも休憩ー」
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