一輪の花

一緒にいた頃より多少メールの数は減った。

彼も仕事が忙しいのだろう。

それは一緒に過ごしていた頃にして欲しかったと彼女は苦笑した。


今それをされては彼が一層遠くなる。


どうしようもない焦りに彼女は彼への返信を止めた。

彼は彼女の返信が無くなると電話をかけてくる、その時も同じだった。

数時間してかかってきた電話にも彼女は出なかった。

それを数日続けてたある夜かかってきた電話についに彼女は出た。

「何で今まで出なかったんだよ」

受話器の向こうで安心したような怒っているような彼のため息が聞こえた。

数日ぶりの彼の声に彼女は涙をひっそりと流した。


「……」

「え?」

彼女の小さな声に彼は聞き返した。

「……もう、別れる」

絞り出すような声が彼の耳に聞こえた。

しかしその声は彼には信じられない事だった。


一緒にいた時はしつこいくらいメールが来たのが嫌だった。

その後返さないと電話をよこすのが嫌だった。

それなのに離れたらその数が減った事が辛い。


彼女は全てを彼にぶつけた。


その返答は短く小さな一言だった。ただ、ごめん、と。


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