同じ願いで
「…ね。…萌音…‼︎」
田中さんに肩を揺すられ起こされた。
「あっ…。おはようございます。」
「おはよう。」
にっこり笑ってそういった田中さん。
よく見ると田中さんも美人だよね~…。
「萌音、降りるよ。」
「はぁ~い。」
まだだるい体を渋々起こして、サングラスをかけてノソノソと田中さんの後ろを歩いた。
「萌音、今から撮影だから、ほらっ。気合い入れて‼︎」
それだけ言って田中さんはスタスタ歩き出した。
その後を必死に追う私。
まずは海に行って、フェリーで他の島に移動する。
そこで、カメラマンさんたちと合流っていう形らしい。
田中さんとフェリーに乗って、今日のスケジュール確認をしていた。
田中さんの手帳の、いつも紙がたくさん入ってるポケットから見たことがある写真が少しだけ出ていた。
赤ちゃんのころの、私と天音の写真に似ている…
「田中さんって、子供さんいるんですか⁇」
「急にどうしたの⁇いないよ。」
「いや、その写真…」
いてもたってもいられず、私の知ってる写真かどうか確認したかった。
「あぁ、これはね…。友達の子供なの。」
それだけ言って、私にその写真を見せないようにした。
「田中さん…⁇」
「なに⁇」
「どうかしました⁇」
心なしか、田中さんが動揺しているように見えた。
まあ、そんなことないよね。
だいいち、赤ちゃんの顔が見えたわけでもないし私っていう確率は低すぎるよね。
双子の赤ちゃんはどこにでもいるよ。
動揺してるのは、私かも。
「その赤ちゃんね、私の友達の子供なの。でもその友達ね、死にそうだからって言って赤ちゃんを手放したの。」
「そうだったんですか…」
私よりも、いい手放し方だよね。
愛されながら手放されたんだもん。
死にそうってことは…
「その…友達は…⁇」
「実はね、今は隠れて普通に生きてるの。沖縄でひっそり住んでるの。」
「そうなんですか~。会えたら会ってきたらどうです⁇」
私からの提案に、気持ちだけもらっとくね と微笑みながら言ってすぐに仕事上の田中さんに戻った。