同じ願いで


「…ね。…萌音…」





重たい瞼を開けると、見慣れた家が目に入ってきた。





あ、アネモネの花、なくなっちゃった…





また、春になったら咲くよね⁇




「萌音、早く入って」





玄関のところでお母さんが暴れる咲華を抱っこしながら私に強い口調で言ってきた。





咲華はもう、おてんば娘だね。





お母さんに迷惑かけないでほしいな…





って、お母さんからしたらそれが嬉しいんだろうけど。





「あ、そうそう。祐くん明後日まで撮影で、残りの4日で萌音を探すつもりみたい」






お母さんが平然とそう答えた。





「そっか…」





祐は、私をまだ好きでいてくれてるのかな…⁇





私、ずるいよね。




でも、まだ好きなの。



祐を忘れられないの。





ごめんね、こんな私で。





それからいつも通りご飯を食べて、家の近くの海にやってきた。





これは、毎日の日課なの。





夏だし、海で少し涼んでからお風呂に入って寝るの。





でも、今日は舞音が微熱だし、私と咲華だけでやってきた。





「ママ‼︎はやくちて‼︎」





玄関から大声で私を呼ぶ咲華。





はぁ…




子供の成長が怖いよね。




どんどん大きくなって、言葉も覚えてる。





だいぶ、ハッキリしてるし…





これからどんどん大きくなっていくんだろうね。





歩いて5分ほどのところにある砂浜にやってきた。





咲華はやっぱり海が好きなんだろうね。





一目散に走って海へと向かった。




「咲華、そんなに走ったら転けるよ〜⁇」





咲華の後ろ姿にそう言うけど、もちろん聞こえてない。






私も咲華のところまで走っていく。





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