春色シルエット


「何が」


問われ、私はいまだ空を見つめたまま答える。


「郁人が、私から離れていっちゃうみたいでさ」

「…………」


郁人からの返事はない。

空に浮かんでいた二人のシルエットも、もう消えてしまった。

昔、郁人が喜んだこの魔法は、本当に短い時間しかかからない。


写真にも動画にも残らず

ただ、心の中のみにあるだけ。


だからこそ、大切に。

心の中にしまい続けたいと思う。


郁人との思い出を。


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