春色シルエット
「ええーっ? 気になるじゃんっ」
抗議する私を見て、郁人は小さく笑った。
最近では滅多に見れない郁人の笑みに、私の心が暖かくなる。
まるで、今日の気候のよう。
郁人の表情が和らぎ、私を見る瞳もどこか穏やかで。
彼の唇がまた動き出す。
「じゃあ、そのまま気にしてればいいよ。そんで、待ってて」
春風が吹く。
「いつか必ず言うからさ」
桜の花びらを乗せて。
「だから……」
春の香りを運んできた刹那。