春色シルエット
「あれ? 帰ったのかと思った」
「そろそろ帰るつもりだよ。で、奈央は? 生徒会の仕事は終わったの?」
私へと歩み寄りながら話す郁人。
少し色白の肌は太陽の陽を纏い、まるでどこかのモデルさん並に綺麗だ。
「うん。入学式も終わったしね。今日はおしまい。あ、そうだ。入学おめでとう、郁人」
お祝いの言葉を述べると、郁人はちょっと面食らったように目を見開いたあと、視線を横に外して唇を小さく動かす。
「ありがとう」
あ、照れてる。
そうだ。こういう風に、誰かの気持ちをちゃんと受け取って返そうとする素直さも変わってない。
だからなのか、通常運転の郁人がそっけなくてひねくれてても友達は多いみたいだ。
「高校も郁人と一緒で嬉しいなー」
「そ、そう」
「私さ、郁人は頭いいから、てっきり進学校に行くのかと思ってたんだ。郁人ママもそんな話ししてたしさ」