春色シルエット


郁人は昔からお利口さんな子だ。

というか、あとで苦労するくらいなら最初からちゃんとやっておくのがポリシーらしい。

そんな郁人が私の通うごく普通レベルの高校を受験すると聞いた時は正直驚いた。

この高校で秀でてるのは、運動部の成績くらいだけど、郁人は運動が得意な方じゃないし……


「今更だけど、どうしてこっちにしたの?」

郁人が決めたことだし、同じ高校なのは嬉しいから今まで聞かなかったけど、今疑問に思ってしまったから聞いてみる。すると、郁人はちょっとムッとして唇を尖らせ……


「……そんなのお前が……るから……決まってるじゃん」


ブツブツと、唇の中だけで喋った。


「え?」


小さすぎてよく聞き取れなかった私は、郁人の顔を覗き込むようにする。

途端、郁人はプイッとそむけてしまった。

気のせいか、顔が赤い。


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