愛結の隣に悠ちゃん
記憶とは違う話 ―母side―
―母side
愛結が帰りが遅くなった日、私はまたあの悲劇が起こるのではないのかと心底怯えた。
しかし、愛結は遅くなったけれど帰ってきた。
愛結が今実行しているのは、小学生の時流行った神社巡りで神様を訪ねて願い事をお祈りするというものであった。
愛結は高校生になっても、ずーっとませることもなく反抗期もなく小学生の時のままであった。
神社巡りにまた行くと言い出した時、いつもより厳しくに愛結には言った。本当は神社巡りに行かせるのも怖いくらいだ。
そして、愛結といつも一緒にいた悠人の部屋に入り写真の悠人に何度も愛結を守ってと祈りを告げた。
同時に、神社巡りに行ったはずの愛結が悠人の部屋に入ってきた。
慌てて涙で霞む視界をクリアにするために涙を拭った。
「ママっ……この人、分かる……?」
愛結がなにかを掴んでいる、私にはそれだけが分かった。
私にはなにも見えない。
いや、愛結が私のことをからかっているだけなのかもしれない。
「悠ちゃん……悠ちゃんだよ?」
愛結の口から信じられない言葉が出た。
悠人は小学五年生の時に交通事故に遭ってしまった。
「愛結……からかわないで」
悪い冗談だ、神社巡りに行った日以来。おかしい。
一度も約束を破ったこともないのに、おかしなことをいったこともないのに。
「本当だよっ……」
愛結の表情は真剣だ。
なら、その冗談に嫌々ではあるけど付き合おう。
「悠人……ここに、いるの?」
愛結の方を向きながらなにもないところをぎゅっと抱き締めてみた。
すると、なにもないはずなのになぜか温もりを感じられた。
力を強めてもなにもないところなのにこれ以上腕を強くしめれない。
目には見えないものだけれど、なにかがある。