愛結の隣に悠ちゃん


悠人と共に一階へ降りて母と父のもとへ行く。

「ぱぱっ、ままっ行ってくるねぇ」

「おはよう、朝ごはんどうするの?神社巡りするんでしょ?」

「おぉ、それはいいな。」

優しい両親と悠人。恵まれた環境に育っている。

「ぱぱっ、ままっ……お願い事してくるねっ、ばいばあいっ」

「気を付けるのよ、夕方までには帰ってくるのよー 」

母が優しい声音で愛結に告げる。優しい両親のことが大好きな愛結は二人に手を大きく振りにぱっと笑う。

少し大きなリュックを背負い、中には飲み物の入ったペットボトルやおにぎり、財布が入っている。

家から出て二人きりになれば愛結は悠人に目を向けて変わらぬ笑顔を向ける。

「ねぇっ。悠ちゃんは何をお願いするの?」

「あー……秘密。てかさ、しゃべっちゃダメなんだってよ。願い事叶えてもらえなくなるぞ?」

「そ、それはだめっ……えーと、じゃあ違うお話ね!!」

困った表情を一瞬見せるものの、すぐにいつもの緩い笑みを浮かべる愛結。

一つ目の神社は徒歩で10分程度である。そもそも全部それくらいの距離だが。

「愛結、ちゃんと飯食ったのか?」

悠人は愛結のお兄ちゃん的な存在だ。
幼さが抜けない愛結だが、愛結の中にはいつも悠人がいて、その存在がお兄ちゃんとしてではなく恋愛として、好きな人としてであるということも愛結は分かっている。

「んーん、まぁだ。おにぎり食べるねっ。あっ、悠ちゃんもはい、あーんっ」

ふにゃりと緩い笑みを浮かべて悠人の口元におにぎりを持っていくが、悠人は首を横に振った。

「俺はいーから、愛結、お腹すいてるし愛結がいっぱい食べて気合いいれねぇとな」

頭を優しく撫でて愛結に食べるように言う。




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