愛結の隣に悠ちゃん
「俺は……母さんの言うようにトラックで轢かれた。一瞬のことだからそんなに覚えてない。でも、俺は今ここにいるのもどうしてかわからない」
小学五年生の時悠人は愛結が大好きな猫を追いかけて十字路に出たとき、轢かれそうになったのを見逃さなかった。
トラックのクラクションが響けば、あり得ないほどの反射神経ですぐに愛結に駆け寄り、ランドセルを思いっきり引っ張り愛結は歩道側へ自分は道路へ放り出された。
何故か恐怖はなかった、どちらかと言えば愛結がいなくなることに対しての方が悠人にとっては恐怖であった。
「気がついたら俺は……愛結が寝てるベッドと父さん、母さんを見つけた。天井から三人を見てた」
淡々と悠人が自分に起こったことを愛結に話す。
「で、次に俺を見たんだ。俺はベッドの上で寝てた。あー、そっか。俺、もしかしたら幽霊なんだなーって思った」
悠人が話す言葉に嫌々と首を横に振った。
悠人が幽霊なわけない、悠人は自分と話ができているのだから、それを根拠に絶対に信じないと自分に言い聞かせる。
「でも、俺にはなんの後悔も無い。愛結が今いきてるんだから……ただ……ごめんな、五年生の時愛結に学校でも、話してたらもっと愛結は楽しく毎日を送れてたかも知れないのに……」
悠人が申し訳なさそうに愛結に謝る。
「愛結、俺は幽霊か自分でも分かんない。でも、愛結を守ることは出来るってここ何年かで分かった。小学生の時みたいなことはもう絶対しない」
愛結の目をじっと見つめながら悠人が言う。
その真剣な眼差しに愛結は嬉しそうに微笑んでぎゅっと抱きついた。
そして、愛結の叶えてほしい願い事はここで少し変わった。
まだ、悠人にも誰にも絶対に言わないが。