愛結の隣に悠ちゃん
涙が流れなくなり、落ち着くと良介に話す覚悟ができた。
「あのね……愛、幽霊が見えるの」
覚悟ができても、いざ話してみるとごくりと生唾を飲み込み、緊張から手汗をかく。
嘘だろとか冗談言うななどとは言わず、良介はただ真剣な面持ちをし、愛の話に耳を傾ける。
「前の学校……中学でもねっ……これが、原因でっ……ノートとかにはっ……落書きされるしっ……」
話しているとだんだん辛くなりまた、涙が溢れ出す。
そんな愛の姿を見ていると良介が強く愛を抱き締めた。
「ええわ、そんな辛いこと思い出してまで話さんでも。大体分かったし」
愛の肩を抱いて髪をくしゃりと荒く掻き回す。
「あんな、これまでの奴等がどんな愛の対応をしてきたかなんて俺にはちょっとしか分からへん。でも、俺はそいつらみたいなことは絶対せんし、嫌いにもならん。ただ、愛のこととられてるよーな気がするんは気に食わんけどな」
愛の肩を掴みじっと熱く真剣な眼差しを向けて良介が告げる。
初めての言葉にまた、涙が溢れ出せば荒々しく頭を撫でられる。
「泣くなや、悪いことしてるみたいやん」
良介が苦笑いをしながら愛に言う。
良介は一生、愛のことを支えて行かなければと心の中で呟き、愛はこの人となら一生一緒にいられると分かった。
しかし、愛と良介がこれからも一緒にいられる時間が限られているということを愛はまだ知らず、良介も言い出せずにいたのであった。
ただ、こうして二人で寄り添っているのが心地よく、ありがたいと良介のなかでは思えるようになっていたのだ。
ずっと、こうしていられたら。それが良介の今の思いであった。