愛結の隣に悠ちゃん
ぐったりと椅子に座る良介の姿をくすくすと笑いながら見届ける愛。
「まあ、夏休みとか冬休みには日本に帰ってくるし……そない、寂しいはならんかあ」
良介が少し不満そうに言えば、愛はただきょとんとする。
「へ……?」
首を傾げたまま抜けた声をあげる。
「……少しは妬いてほしかったわ」
むすっとした表情のまま頬杖をつく。
そんな発言をされたのは初めてで愛は自然と口許が緩み嬉しそうな表情を浮かべたままだ。
「……最近、調子狂ってまうわ……」
はぁ、とため息をつきながら苦笑いを浮かべて前髪を掻き上げて愛の方を見る。
「お待たせしました。コーヒーとオレンジジュースになります。」
「あ、追加でいちごのムースもお願いします」
コトン、と静かにコップが置かれ、店員が一礼し去ろうとすれば良介が店員に追加注文をした。
「あれ、甘いもの食べるの?じゃあ愛も……」
愛がメニューを取り選ぼうとすれば良介が愛の手をそっと握る。
「愛のや、俺甘いもん好きちゃうし」
苦笑いしながら愛に告げる。
愛は嬉しそうに笑う。そして、握られた手に違和感を覚え良介を見つめていた目線を自分の手へ変える。
「……これって」
薬指にはめられたハート型の飾りのついた指輪を見る。
指輪と交互に良介の顔も見る。
「……俺はバイトもしとらんから、高いもんは買われへんけど……そのうち、将来な……絶対ええもん……いや、愛にぴったり似合うもん買うてくるから」
愛の手をぎゅっと握りながら真剣に言うが、愛はくすりと笑う。
何がおかしいと聞きたそうな顔をしている良介。
「私……こっち、右手」
「……あ」
良介が緊張のあまりはめる指を間違えたのだ。
二人の緊張はすぐにとけてくすくすとお互いに笑いあった。