愛結の隣に悠ちゃん
「ふぅ、ふぅ……」
昔のことを思い出して呼吸するのが難しくなり、息苦しくなって屋上の手前の扉の前でしゃがみ扉にもたれ掛かり息を整える。
気にしないでいるつもりだったのに、言われたことが昔と同じだとそのことに照らし合わせてしまう悪いことだ。
-カッカッカッ
誰かの階段を上る音がする。
今の時間帯だと、先生ではないからばれても構わないと内心思っている友里亜。
「やっと……見つけたわ」
息を切らしながらやって来たのは今一番会いたくない財前だ。
「……何、さらに追い討ち?悪趣味」
やっと整った息で財前に嫌みをぶちまける。
そして、そっぽを向けば財前はいつもならいらっとするが今回ばかりは自分が悪いと自覚をしており反抗せず静かに友里亜の隣に腰を下ろす。
「……何よ」
「ええやん。あとこれから言うことは独り言や、聞き流せよ」
と、財前が言う。
いちいち宣言しなくても良いのにと友里亜が内心思えば話は突然始まる。
「……悪かった。クラスのやつらあんなんゆーてたけど、やっぱええ奴やねん。お前、いつもならあんなん普通に言い返してるやん、言い返さんかったら調子狂うやろ」
最初に謝ったあとは、いちいちムカつくことを言ってくる独り言だ。
その言葉を聞きながら苛立ちを隠せずにいる。
「なぁ。なんでお前あんなしんどーい感じでさっき聞いてたんや。理由は……言いたくないなら聞かんけど、俺は知りたい」
急に真剣な眼差しを友里亜に向けて言う財前。
その眼差しに友里亜の心は少し動いた。
「……女の子の友達、私できたことがないの。で、前のとこでは男の子と友達になることは簡単だった、でもそれを女の子達は気にくわなくて嫌がらせをされたの」
友里亜が口を開いて説明する。
それは、過去のことだ。
過去にあった嫌がらせのこと、今されている嫌がらせのこと、先程どうして途中教室から出ていってしまったかなどを告げる。
財前はただ黙って頷いて聞いた。