愛結の隣に悠ちゃん


「愛結っ……あ、えと……」

いつもの調子でにこりと笑いながら言えば、はっとする。
そうだ、聞こえないんだ。
そう思うと自分の携帯電話を取り出してメールの画面にして“忍足愛結”と書く。

「……そういえば」

ふと、愛結が思いメールの画面に文字を打ち込む。

“花ちゃん、この人のこと見える?”と書いて悠人の方を見る。

こくんと頷く花。
それを知ればぱあっと愛結の表情が明るくなる。

「悠ちゃんっ、悠ちゃんのこと見えるって!」

初めてのことににこりと嬉しそうにしながら悠人に告げる。

「お、ほんとか……?」

目を大きく開いて愛結に言う。
そして花ににこりと笑って見せる。

“二人は恋人?”と花が書いて見せる。
すると二人して慌てて首を横に振ってお互いの顔を見合わせる。

「あ、えと……友達、だもんねっ」

「友達、だなっ」

お互い耳まで真っ赤にしているくせに恋人と言われれば否定をする。

“恋人なんだねっ、だって二人ともすっごくお似合い!”と書いた画面を見せてきてにこりと笑う。

「ち、ちがっ……」

二人して恥ずかしそうに言う。
そして、顔を見合わせれば恥ずかしくなり顔をそらす。

“そういえば用事があるの?ここで人とすれ違うことなんてほとんどないのに”

花が画面を見せてきょとんとしながら尋ねる。

“神様……知ってる?神社の噂の”

愛結がうまくまとまっていない文章を花に見せて言う。

すると、こくんと頷いて信じがたい文章を打ってきた。

“うん、願いを叶えてもらえたから今、私は生きてるけど耳が聞こえなくなったの。これは、運命が変わったから。ほんとなら死んでたんだよ私……信じてなんてもらえないだろうけど”と花が長い文章を打って見せる。





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