愛結の隣に悠ちゃん
七章:君のいない世界で
「愛結……?ご飯は?……開けても「入ってこないでっ!」
悠人がいなくなった日から愛結の生活は何一つとして楽しくなくなった。
そして、あの日以来愛結は幽霊や神が見えなくなっていた。
記憶も日に日に薄れて怪しい。
♪~♪~♪~
聞きなれた音楽が数秒間だか流れる。
着たのは、メールだ。
【愛結ちゃん、神社巡りに行こう。】
神社巡りってなんだっけ、愛結の頭にはそれが真っ先に疑問になった。
それに、このアドレス……花ちゃんって誰?
愛結はこれまでのこと、全てを忘れかけていた。
覚えているのは、学校で友達がいなくて苦痛な毎日を送っていること。
そして、なにかがすっぽり抜けたようになっていること。
「あ、この服……懐かしい。」
いつ買ったのかは忘れてしまったけれど長年着ていない気がする。
そして、なんとなくポケットの中を漁る。
「ん……何、これ……?」
出てきたのはお札だ。
洗濯してるはずなのにシワ一つないってことは最近のものだと思うが、心当たりがない。
「んー……っ、やっと出してくれたか」
神秘的な光に包まれて出てきたのは着物を着た男。
突然のことに目を大きく開いて腰を抜かしてその場でしゃがみこんでしまう。
「あり、お嬢さん……その様子だと……記憶、抜かれてんだね。え、どこまで覚えてんの?」
男がしゃがんで愛結と目線を合わせる。
「どこまでって……言われても……」
なんのことだか分からずきょとんと首を傾げてなんのことだか必死に思い出そうとするが、頭の奥が痛くなるだけで何も分からない。
「……火鏡崎野か」
神がぼそりと呟く。
聞いたことのないはずの名前なのにどこか懐かしい気がする。