愛結の隣に悠ちゃん
火鏡崎野について
「火鏡崎野、生きていた時の名、財前悠人は以前の火鏡崎野の立場を奪い取り神となった……俺らとしてはあまり好きにはなれない。が、俺も火鏡崎野に出会ったのはつい最近がはじめてだ……なぜ前野帝臣が火鏡崎野と……」
神が顎に手を当てて考える。
「悠ちゃんは……もう、戻らないの……?」
不安そうに愛結が尋ねる。
しかし、神はなにも答えない。
「……悠ちゃんに……会いに行くっ」
愛結が立ち上がりそれをぼそりと言えば部屋から出ようとする。
「そう言うと思ったぜ……ほら、なんのために俺がいんだ。……お嬢さん、掴まれ」
神がにこりと笑いながら愛結に手を広げて迎える。
愛結は神にぎゅっと抱きついて、愛結と神は一緒に神秘的な光に包まれてすぅっと姿を消した。
「わっ……」
一瞬、すっと体が軽くなると思った矢先、一気に重みとなり神にぎゅっとしがみつく。
目の前にいるのは横になっている前野帝臣と退屈そうに寝転がっている火鏡崎野だ。
「お、ついに裏切り者が出たか……島岬風涼(シマミサキフウリョウ)」
「裏切り?お嬢さんの親切を恩で返してるだけだ、前野帝臣」
二人の間に火花のようなものが飛び散りじっと二人がにらみ合う。
「前野帝臣……何を考えているか知らねぇけど、なぜお嬢さんのボーイフレンドの記憶を飛ばした?……前の火鏡崎野そっくりだな……」
まじまじと島岬風涼が火鏡崎野を見つめる。
すると、ぷっと吹き出して笑いだす前野帝臣。
「あったり前だ、財前悠人の魂が何故か火鏡崎野に憑依してただけなんだから」
けらりと笑う前野帝臣に二人は目を大きく見開くしかない。
「……なら、憑依してた……財前はどうした!」
きっ、と睨み前野帝臣に怒鳴りつける。