愛結の隣に悠ちゃん
八章:神様、全員集合
「さぁ?どっかにはいるんじゃないのか?ま、もう逝っちまったかもだけどな……はっ」
けらけらと笑いながら言う前野帝臣に島岬風涼よりも先に怒りを露にして前に踏み出し自分より遥かに大きな神を見上げて睨み付け、深く深呼吸をする。
「ふざけないでっ!愛結の悠ちゃん返してっ!」
神に思い切り怒鳴れば神は耳を小指でほじるだけで何も聞かない。
思い切り足を後に下げ、勢いよく脛を蹴りあげる。
「いっでぇぇぇぇえ!」
前野帝臣はびっくりして目を見開き涙目になり脛を押さえる。
一気に顔色が変わり愛結を睨み付けて小さな愛結を手で持ち上げる。
「おいっ、前野帝臣!何をする気だ!」
すかさず島岬風涼が言うが、前野帝臣は何も聞かずふいっと顔を反らし愛結を見れば嘲笑う。
「お前、本当は交通事故で死ぬという運命だったのに……そうだな、お前を庇ったバカな男と共にあの世で楽しくしろよ……じゃあな」
そう言えば軽々と愛結を放り投げる。
しかし、投げられた側はたまったものではない。
愛結はかなりの時間空を舞い上がりしばらくすると地面に叩きつけられたが、痛みはそれほどない。
ただ、自分の周囲の騒音が自分の危機を知らしめる。
自分が事故に遭い、死ぬ間際のトラックが数メートル先にいる。
でも、大丈夫……自分には悠人がいる。この結末を知ってるからこそ安心して振り返る。
しかし、後に悠人はいなかった。
いたのは、今まで出会った前野帝臣以外の神様だ。
皆が愛結を包み込み歩道へ戻す。
愛結はこの状況を理解できなかった。
どうして神が全員いるのか、どうして悠人はここにいないのかと。