愛結の隣に悠ちゃん
一瞬の再会
「愛結っ!」
きょとんとしている皆の前に突然姿を現したのはいないはずの悠人だ。
「ふふっ。私達がこの少年を危険な目に遭うからとそなたのいた時間より少し前に戻り少年は安全なところへ、皆でそなたを守ったのじゃ」
くすりと笑いながら口元を着物の袖で隠しながら言う。
しかし、そのほほえましい出来事に前野帝臣はにやりと気味が悪い笑みを浮かべる。
「はっ……その結果、火鏡崎野の存在はなくなるがな。少しでも過去を変えてしまえば未来も変わる。神が1人いなくなんだよ」
げらげらと笑いながら言う前野帝臣。
「ふざけるなっ……!おいっ、火鏡崎野!しっかりしろ!」
島岬風涼が火鏡崎野の肩を強く掴み揺する。
火鏡崎野がゆっくりと目を開ける。
「……元々、財前悠人に身を渡してしまった時点でっ……神としてはしてはいけない行為……だがしかし、白石愛の……愛結の母殿の喜ぶ顔が……何千年も前に見た……愛しき、妻にそっくりなのだ……彼女の頼みとなればと……聞いた自分の過ち……」
ゆっくりと一言一言話してそのまま疲れきった表情をして愛結の方を向く。
「……愛結、愛の想いを無駄にするな……私たちは……愛結を守るっ……俺も、必ずっ……守るから、な」
そう言い、にっこりと最後に笑みを浮かべれば火鏡崎野の姿はきれいになくなってしまった。
「はっ、人間相手に感情を入れすぎた哀れな神だな」
火鏡崎野の姿が消えてしまえば、前野帝臣がそう言い、げらりとさらに甲高く笑う。
「お前っ……ふざけるなっ!」
「ふざける?お前らは少しの人間どもに感情を入れすぎなんだよ。そんなんで神が務まるか」
見下すように前野帝臣が言う。
すると、悠人が静かに前野帝臣の前に立った。