愛結の隣に悠ちゃん
最終章:愛結の隣に悠ちゃん
「火鏡崎野、財前悠人の体から出るのじゃ……」
最後にそう呟けば二人の体は引き離され、悠人の方はめまいを訴え頭を押さえながら膝を地面につける。
「悠ちゃんっ!大丈夫……?」
「あ、あぁ……大丈夫……愛結、聞いてほしい「こらからはっ!悠ちゃんと一緒だねっ!一緒に暮らせてっ……一緒に……ぱぱやままとっ……」
愛結には分かっていた。
肉体があり、触れる悠人の存在が足元から徐々に半透明になり、すぅっと姿を消していることを。
しかし、愛結は気付いていないふりをしていつものようににこにこと笑って対応をする。
神達もこの対応には唇を噛み締めてそっぽを向いてしまう。
「愛結……俺はもう……」
「嫌だよっ……みんなでっ……楽しく過ごすもんっ……悠ちゃんっ!」
ついに、顔まで半透明になる。
愛結の目には涙が溜まるが、悠人は笑みを崩すことなくゆっくりと口を開ける。
「愛結……俺、愛結のことが大好き……俺がいなくなったら、ここの神社のことも全てなかったことになるかもしれない……愛結も、俺のことを忘れるかも。でも、俺は愛結のことを忘れないし愛結のことをちゃんと見守ってる」
そして、顔をゆっくりと近付けて愛結に口付けをした。
「バイバイ……大好きな愛結」
そう告げて悠人はゆっくりと姿を消してしまった。
そして、神達も次々と姿を消してしまった。
「あれ、ここ……どこ?私……どうしてこんなとこに……なんで、泣いてるの……?」
全て、愛結の記憶から消えてしまい、先程起こったことすら忘れてしまった愛結。
「愛結!帰るわよ~」
母の呼ぶ声が聞こえる。
そうだ、母と一緒にお参りに来てたんだ。