愛結の隣に悠ちゃん
「わわっ……神様、大丈夫……?」
「ははっ、大丈夫だって。んー、食べてみたかったなあ、その白いのも……ま、旨かったぜ!!よし、じゃあここの条件はクリアだ!!」
にっと笑う神様。
袋からフォークを出して一口サイズにケーキをカットする。
悠人も神様もきょとんとする。
「愛結の!!あげるっ。全部はやだけど……半分ねっ」
愛結が神の口元にフォークを運びふにゃりと相変わらずの純粋な柔らかい笑みを浮かべて言う。
「え、いいのか……?いっただきー」
神が一口サイズのケーキを食べれば目を輝かせて嬉しそうにもぐもぐと頬張る。
「うっめー!!あんがとなっ」
満足そうに微笑むと神が懐から一枚の札を出した。
「これはな、絶対今は使うな。使うのは本当に助けてほしい時だけだぞ。お嬢ちゃんは優しいから神様から特別サービスな」
神が愛結の耳元で言えばにかっと笑いすぅっと姿が消える。
愛結は静かに札をポケットのなかに入れた。
「愛結ー」
神がいなくなれば、悠人が愛結の肩に顎をのせて甘え始める。
「んー?」
きょとんとして肩に乗った悠人の顔を目だけで見る。
「ケーキ食わねぇの?木陰にベンチあったぞ」
悠人が指差すのは神社の入口のすぐとなりにあるベンチ。
先に悠人が座ればその隣をとんとんと叩いて愛結が嬉しそうに座る。
「いっただきまーすっ」
膝の上にケーキの乗ったパックを置きぱくぱくと食べ始める。
一口一口食べるたびに悠人の方を向いて嬉しそうに味の感想を言い、それを悠人は微笑ましそうに聞く。
「はい、悠ちゃんっ。あーん……」
最後の一口になり、悠人の口の前に愛結がフォークで突き刺したイチゴを持っていく。
「ん……うまいな」
イチゴに少しついた生クリームの甘味と苺の酸味が程よく口のなかに広がると目を細めて優しい笑みを愛結に向ける。