夜の女神
「貴女が傍にいてくれるの?」
華奢な矮躯にコルセットを付けた少女は、まだ幼さの残る顔に似合う屈託のない笑みを広げ女を迎えた。
ドアを開けようとした瞬間に内側から先に開けられ、咄嗟に腰裏に隠したハンドガンへ手を 伸ばしただけに、目の前の少女に対する驚きは倍。
だが、すぐに感情を消してうなづく。
「今この瞬間から明晩まで、護衛の命を受けました」
「嬉しい…我が儘を言って女の人が良いって言ったの。ごめんなさい」
入ってとでも言うように、細指が女の腕を取 って室内に誘った。
「紅茶はお好き?」
「いえ。仕事中は飲食の類は禁じられていますので」
アンティークのティーセットが用意された席に座るよう促されながら言われた言葉に、サっ と首を振る。
少女は傷付いた、と言うよりは困惑したように結んだ手を口許に添えて目をあちこちに泳がせた。