夜の女神






「私…世間知らずで申し訳ありません。けれど実は貴女が到着する時間に合わせて、…その」


その言葉の先を予想し、女はそれを引き継いだ。






「茶葉を蒸して下さったのですか?」


「…はい」


申し訳なさそうにポットを開ければ紅茶特有の質の高い華やかな香りが鼻腔をくすぐり、中 には調度良い具合に蒸された茶葉がふっくらとしていた。




「浮かれてしまってごめんなさい、片付けますね」


そう言った彼女は直ぐに家の人間を呼ぼうとしたので、無言の内に手でそれを制した。


いけないのだ。パーティーが始まるまで何時如何なる場合、どんな事情、緊急事態が生じようと。




「(何人たりとも入室を許可するな、…だっけ)」




――言われたことを忠実に。


女は頭を下げてから少女を椅子へと腰掛けさせる。ドレスの裾が床と擦れぬよう気をつけながら。
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