夜の女神
男は急にその甘いマスクから笑みを消し、女の細い腰に左腕を回しながら
ドアのある方の壁へと追いやり男から見て右側の女の髪をかき分けた。


「なぁ…。俺があげたピアスは?」

吐息が耳にかかるくらいの距離から発せられる
甘い低音ボイスが女の腰から背中にかけて快感を引き起こす。


「っ 」

「なくしたか?」


男は、耳のピアスの穴を八重歯であまがみした。
痛みか快感かわからないそれをは、女をイラつかせるのに十分だった。

 
「っもぅいいでしょ…屋敷にあるはずだから、早く帰って探したかったのよ」


ここで意地を張ってもしょうがない、と溜め息混じりに降参した女に、くすくすと笑う男。



最後に白い耳たぶにキスを落とし、体勢を戻した。女はさっさと髪を元に戻すと先を急ぐよ うに足を早める。ばれた途端に、この開き直り。



男は女のそんなところが嫌いではなかった。



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