監禁されることがお仕事です
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寝て起きるなりに、今日も会社かぁと、うんざりする毎日が続いていた。
会社を辞めてからも然り。反射的、癖、習慣。言い方は様々だけど、彼と違い、私の頭の中には彼以外のことが入っている。
寝ながらも私を探し、無意識に抱きしめる両腕。目も開けきれていない子猫が、母親にすがりつく様を思い出した。
彼には、私しかいないんだ。
思うなり、寝ている彼の頬に触れる。
「雨音……」
起こしてしまった。当然なので、謝罪代わりにキスをする。
フレンチがディープになったのは、彼の二度目があったから。私の体を唾液まみれにしときながら、枯渇知らずの無色は更に私の口腔を湿らせる。
「まだ怒っておいでで?」
「落ち着いた。そうして後悔。今なら、首吊り出来そう」
腕で目隠しする彼。深いため息をついていた。
「逃げていいよ」
「逃げたら追って来るのでは?」
「当然。どこまでも追う。だから、全力で逃げてくれ」
いっそ、殺してしまっても構わないと言われた気がした。
勝手に想像し、苛ついたので、デコピンしておく。理不尽な攻撃に対して、彼が激怒することはないが、退かれた腕の下、赤みがかった目が物申したそうにこちらを見ている。
「私は、あなたに永久就職したのですよ」
「前の会社の方が良かったんじゃない?」
ふざけには、ふざけを返される。
「私の仕事場はここ。24時間営業、年中無休。そうして、仕事はあなたを愛すること。楽勝です。これほどの転職はありません。私にしか出来ないことだし」
呆けている彼を抱きしめる。
「他の人がこの職につくぐらいなら、私こそ首吊りますからねっ!」
胸の中で笑われた。
そっかそっかと、安心したように笑われた。
「俺も、雨音じゃなきゃ嫌だよ。クビになんかしないから。一生、ここにいて」
大概、ここで躊躇う人が多数だろう。
彼を愛するには、自身の自由を犠牲にしなければならない。
けれども、私の答えはもう決まっている。
社蓄舐めるな。自身の自由なんて二の次。
「生涯を、あなたと共にしますよ」
その程度で彼を愛せるなら、安いものだ。