群青色の、空を見上げて。
クリスマスイブの星空観察に対しては、まだまだ不満があるため、朝の会が終わった後、理科室に行って、宮崎先生になおも抵抗する。
「宮崎先生。やはり、でぇとは大事だと思うんですけど」
「……じゃあ聞くが、お前、誰とその、“でぇと”とやらがあるんだ。え?」
煙草臭い顔をぐっと近づけて、わたしに詰め寄るやもめ理科教師。
「……わたしにもプライベートというもんがあるんですよ」
「ないだろう」
勝手にそう決めつけるやもめ理科教師。
500mlのビーカーにアルコールランプで沸かしたお湯を注ぎ、何を始めるのかと思ったら、そのビーカーに紅茶のティーバッグを入れた。
「…センセ、何してんすか」
「見ての通り、紅茶を入れているのだよ、天野君。ほれ、ちょっと飲んでみろ」
そう言って、やもめ理科教師は200mlのビーカーに500mlのビーカー内の奇妙な液体を注ぎ込む。
「おい、何顔引き攣らせてんだ。意外とうまいんだよ、これが。とりあえず飲んでみろ」
「ちなみに、このビーカーでアンモニアを使用したことはあります?」
「ああ、もちろん。科学部が使ってたぞ。鼻に洗濯ばさみをひっかけてる奴もいたな。ハハッ」
わたしはアンモニアの入っていたという200mlのビーカーの中身を、黙って水道に流す。
「ハハッ、じゃないですよ!何飲ませる気ですか!?」
まあまあ、とやもめ理科教師はなだめにかかる。