群青色の、空を見上げて。


「な、ソラ。お前がオリオン座の観測会に反対してる理由ってさ―――」



 カフェオレの缶から唇を離した佐賀は、わたしの目を見つめながら言った。


 佐賀が、何を言おうとしてるのかはわかる。だけど、今はその言葉を聞きたくない。


 わたしは、佐賀のあたたかい背中に抱き付いて言った。


「……今は言わないで」

 彼の鼓動を感じながら、必死に言った。声が震えているのを隠すため。

 彼に心配はさせたくない。

 はっとしたように、彼はカフェオレの缶をきつく握り直す。

 
「……ごめん。」


 大丈夫、というようにわたしは頭を横に振る。


「……まだ、辛い?」


「ちょっとね」


 微笑みながら佐賀に言うと、佐賀はわたしの頭にぽんと手を置いた。


 ……男の子の手だなぁ。


 固くて、大きくて、あったかい。

 佐賀の温もりが、直に伝わってくる。


 少しだけ恥ずかしくなって、身じろぎをすると、佐賀はわたしの髪をすくようにしてから、ゆっくりと手を離し、自転車にまたがった。


「佐賀」


 わたしが名前を呼ぶと、佐賀は、ん?という風に振り向いた。



「ありがとう」

 

 佐賀は、静かに頷くと、わたしの額にキスをした。

 
 

 




 
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