ドラマチック・ロマンス
お互いに隣に座り、夜空を見ていた。終始、私たちは何も話さなかった。伊吹とは、無言でいられる。
学生時代も何も話さなくても、伊吹とは何故か平気だった。
結婚しているの?とか、どんな仕事してるの?とか、お互いに口には出さなかった。
伊吹も聞いて来ないし、私からも言わないでおこう。
あぁ、もっと一緒にいたい‥‥
もっと一緒にいたいのに、何を話したら良いのか‥‥‥
「あの、これから居酒屋でも行きませんか?」
このまま、さよならなんて勿体無さすぎるよ!
伊吹をちらっと見ると、伊吹の綺麗な瞳が目に映る。
「うん、行く。」
ニコって笑う伊吹をずっと見ていたくなった。
大人になった伊吹。もっともっと話してみたい。話すのが下手くそな私だけど、今日は伊吹と話がしたいよ‥‥‥。
屋上を後にした私たちは、不意に、ポツポツと鼻の頭が濡れたことに気付く。
「雨かよっ、ほら花菜!走るぞっ!」
「えっ!」
何を思ったのか、伊吹は私の右手を繋ぎ走り出してしまった。