ドラマチック・ロマンス
“コーチ心配症だろ〜!”




と言って軽傷だった生徒は、俺が止める前に駆け出してしまった。





「ふふ、まさか伊吹がコーチをやってるとはね」





走り出してゆく生徒を見ながら、杏は真っ白な白衣を来てそう言った。





「あぁ、だな。」





まさかの坂って本当にあるんだな。





こんなときなんて言ったら良い?





「伊吹、高校時代から心配症だったよね?キャプテンになったときも、合宿のときも、みんなの心配してくれたよね。」





高校時代の俺を知る杏。




花菜は知らない俺の高校時代・・・・




「伊吹は、今彼女いるの?もし、いなかったら・・・・」




杏・・・・辞めてくれよ、“もし”とか言うの。




俺はハッキリ杏に言う。顔もきちんと見て。




「あぁ、いるよ。」




俺のそのセリフを聞き、杏は“そうか”と頷いていた。





そして、杏か近づいて来て、俺の耳のあたりで




「伊吹だけが幸せなんて嫌。私も、幸せになりたい。」




そう言って、俺の顔に唇をつけそうになる杏。




杏とキスをした過去は消せない。





「おいおい、勘弁してくれよ。」



俺は、急いで杏から離れる。





「仲良しな彼女がいるから、私とキスなんて出来ない?」




「あたりまえだろ!どうしたんだよ、杏!」





どうしちまったんだよ?




お互いに了承して別れたよな?




「な〜んてね!ちょっと、からかっちゃった!!」





杏はへらへらと笑って俺を見ていた。


俺、だけか?



なにか、胸さわぎがするのは・・・・



















杏とはそれっきり話してはいない。




「杏ちゃん、まだ兄ちゃんのこと好きとかじゃないよな?」



“そうだったら、花菜ちゃん可哀想”と斗真は俺を見て言った。



< 119 / 252 >

この作品をシェア

pagetop