ドラマチック・ロマンス
私も、慌てて青になった信号を渡ると、伊吹の横を歩いた。




「あ、家から電話だ!・・・ごめん、出ていい?」




バイブが鳴っていると思い、ケータイを確認すると、家から電話が掛かってきていることに気付く。


伊吹は、コクンと頷いて私が電話に出るのを見ていた。




−−−−−−『姉ちゃんっっ!?今、ドコだよ!!』



耳にケータイを当てると、うるさいほどの大音量でしゃべる、弟の将太(しょうた)の声がそこにいる。



「あ、ごめん。電話するの忘れちゃった。」



−−−−−−『忘れちゃったじゃねーよ!ばあちゃん、心配してんじゃん!!』



将太は今小6で、来春、中学生だ。今は、お父さん方の、おばあちゃんとおじいちゃん、そして、将太と住んでいる。

お父さんとお母さんは、お母さんの方の、おじいちゃん、おばあちゃんの家・・・沖縄へ、おばあちゃんの様子を見に、一ヶ月ほど行ってしまっているからだ。

去年、お母さん方の祖父が亡くなり、おばあちゃんが一人になり、やっぱり心配なんだと思う。




「でも、あと一時間下さいっ!将太、おばあちゃんに言っといて!・・・やらなきゃならないことがあるの!!」



将太は、『分かったよ!パイの実一つ姉ちゃんの奢りな。』と生意気な事を言い捨て、電話を切られた。


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