ドラマチック・ロマンス
「こりゃ、降るかな。」



車を走らせ、信号待ちをしていると、遠くの空がどんより曇っている気がした。



海岸沿いのその道は、車もまばらで人もなかなかいない。



今日は、花菜の学校は、近くの海岸で“海岸清掃”なるものに全校生徒で中学の近くの海まで行っているらしい・・・




『今年もやるんだ、その行事・・・』




『やるよぉ! 熱中症に気をつけなきゃだね! 生徒のみんな大丈夫かな?』




『生徒も心配だけど、花菜も気をつけろよ?おまえが倒れたら、意味ないんだから。』



『うん、ありがと伊吹!』



伝統行事みたいなもので、俺たちの代にも、毎年行っていた。生徒たちからしたら、無駄に迷惑な行事だ。



歩きで、海まで行くから体力も奪われる。昨日、電話越しに花菜の声がなんだか楽しみそうだったことを思い出す。


“楽しそうじゃん”と俺が言ったら、“中学の頃の伊吹を思い出して、掃除するんだ〜”と、こっちが照れることを平気で口にする花菜。花菜は俺の事を全然わかってない・・・・
そんなことを言われたら、尚更花菜が愛しくなるじゃんか。




「雨、降らないといいな・・・」




とつぶやくと、俺はハンドルを進行方向の逆に切った。




配達がてら、海の方をちょっと見ようと車を走らせた。


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