ドラマチック・ロマンス
俺が、車で来ていると言うと、実夏に歩いて帰ろうと駄々をこねられ、仕方なく、実夏の言いなりになった。



まぁ、いいか・・・と、止まりながら、空気を吸う実夏を見ると、不思議と、そう思えてくる。




俺は、実夏の自転車を変わりに歩きながら、漕いだ。
田んぼ道が続くこの道は、俺にとっては見慣れた風景だけど、こいつにとったら、ホッと出来る風景なんだろう。





田んぼ道を二人で歩く。






「仕事、大変か?」





「まぁ、思い通りにならないこともある。失敗や、考えることもたくさんあるよ。けど、前に進めたとき、すごく嬉しい。悩むことは、いっぱいあるけど、その時は、少し立ち止まる。
この先、自分でも驚く事が起こるって、小さい期待があってね。私の人生は、捨てたもんじゃない、って思えてくるんだ。」




実夏は、小さいことから、よく泣く子だった。
すぐ、俺にしがみつく、小さい女の子だった。




そんな実夏は、もう子供のころの実夏じゃないんだ。





俺は偉いじゃん、と実夏に言うと、実夏は、少し笑って、そんなことないよ、とにっこりした。



逞しくなった、実夏。


大人の女性になった実夏がにっこり笑うと、その笑顔を見て、一瞬、どきりとした。


< 249 / 252 >

この作品をシェア

pagetop