【完】矢野くん、ラブレターを受け取ってくれますか?
「もうすぐ、新幹線が出発しちゃう時間、だよね?」
「…………」
「ほら、はやく行かないと間に合わないよ」
作り笑顔だってバレバレだよ、美憂。
ずっとそばにいたんだから、そんなの俺にはお見通しだっての。
美憂のことだから、笑顔で見送ろうとか思ってムリしてるんだろう。
「じゃあね、拓磨くん」
そう言うと俺に背を向けて去っていこうとする美憂。
俺はそんな美憂の腕を引いて、抱き寄せた。
「った、拓磨く……っ」
「俺、やっぱムリだわ」
「へ……?」
「美憂を置いていくなんて、できない」
美憂を手放すなんてこと……やっぱり俺には不可能だ。
美憂がいないと……ムリ。
こんなに可愛い彼女を手放すなんて出来るワケない。
「……俺、向こうに行くのやめる」
俺の腕の中にいる美憂の温もりを感じながら、そう言った。