タカラビト

「ただいまー。」


玄関を開けるとカレーの匂いがする。
それとともに母の声が聞こえる。

「おかえり。カレーよ。着替えておいで。」

「うん。」

部屋に戻って机の上に並べてる夕焼け空の写真を見ると思い出した。
誰だったんだろう。うちの学校の制服かな?夕焼けで制服すらわからなかった。
晴れの日はほぼ毎日あの河川敷で音楽聞いてるのに初めて見たんだよね。明日もいるのかな。

そんなことを考えてるとまた母の声。

「乃亜、カレー冷めるわよ。」

「今行くー!」

「はい。今日はいつもと違うカレーなの。どう?」

「うん、美味しい。」

「そう、良かった。」

沈黙が続き、テレビの音がさらに静けさをはっきりと表す。

「お風呂、沸いてるから食べたら入ってね。」

そう言って、母は台所へ向かい、洗い物を始めた。

「ごちそうさま。お風呂入ってくる。」

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